心理カウンセラーのところてんです。今回から読了した書籍の紹介をブログに上げていきたいと思います。
第1回目にご紹介するのは、第3世代の認知行動療法と呼ばれている
ACT(アクト:アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の書籍であるこちら
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今回はこの書籍から、
幸福になろうとしてもうまくいかず、反対に苦しいことが増えてしまうメカニズム
について、私なりに整理してご紹介したいと思います。
この本を読んでほしい方
この本をお勧めしたいのは
- 幸せな生活を送る方法が知りたい方
- 不安などネガティブな考えとの付き合う方法が知りたい方
- 認知行動療法やACTに興味がある方
です。
今回の書籍は、専門書ではなく一般の方向けに書かれた本です。
将来の不安や人間関係の悩みなど、誰しもが抱える問題に関して、
問題の捉え方や対処方法を心理学的根拠に基づいて説明されています。
心理学を勉強したことが無い方にとても読みやすい本です。
また、ここ数年流行りのACTに興味がある方はもちろん、
認知行動療法やACTになじみのない心理カウンセラー(公認心理師・臨床心理士)の方にとっても読みやすい本だと思います。
今回はこの書籍の はじめに~第1章 の内容を、私なりに整理してご紹介したいと思います。
幸福の罠
この本では、幸福の罠について、
私たちは幸福になるために嫌な感情を排除しようとする。だが排除すればするほど、感情は再生産される。(p38)
と書かれてあります。
確かに、
”幸福になるために嫌な感情を排除しようとする”と書いてあるように、
”幸せになるために不幸をさけている(失敗しないように気を付けている)とき”や、
”幸せな状態を維持しようとしているとき/幸せにこだわっているとき”など、
幸せになることに強くこだわったり、極端に失敗を避けたり、
焦り/不安/緊張などのネガティブな感情を感じないようにすればするほど、
幸せな状態から離れてしまうように思えます。
例えば、「年収1億円あれば幸せになれる」と目標を立てて、それにこだわる人は、
お金を稼ぐことに時間を割きすぎたり、お金を使うことに罪悪感を感じるようになり、
プライベートがつまらないものになってしまうかもしれません。
どうやって幸福の罠にはまるのか?
本の第1部では、幸福の罠を構成する要素として次の2つの誤解が紹介されています。
この誤解の影響で、人は幸福の罠にはまってしまいます。
誤解1:幸福であることが普通だ。/幸福でない原因は本人の努力不足にある。
誤解2:幸福になるためにはネガティブな感情があってはならない。
/思考や感情はコントロールしなければならない
これから、この2つについて説明をしていきたいと思います。
誤解①:幸福であることが普通だ/幸福でない原因は自分の努力不足だ。
この誤解によって、人は自分が苦しむ機会を増やしてしまいます。
例えば、友達との交流を楽しむために始めたSNSなのに、
・SNSで友達の楽しそうな投稿と自分の生活を比較して落ち込む
(幸福であることが普通と誤解している)
・”みんなのように楽しく過ごせない自分はダメな人間だ”と自分を責める
(幸福でないのは自分の努力不足と誤解している)
と誤解によって、本来の目的とは真逆の結果を招いてしまうことがあります。
SNSを始めた目的は“友達との交流を楽むこと”なので、
友達の投稿に「おもしろそうだね」などのコメントをして、
交流のきっかけにすれば良いはずです。
ですが、”幸福であることが普通”、”幸福でないのは自分の努力不足”の誤解によって、
落ち込んだり自分を責めてしまい、折角の交流のきっかけを逃してしまっています。
このように、本末転倒な結果になってしまうことは身近なことではないでしょうか?
次は、もう一つの誤解についてです。
誤解②:幸福になるためにはネガティブな感情があってはならない/思考や感情はコントロールしなければならない
この誤解によって、幸福になろうと不幸な出来事/ネガティブな感情に向き合い続け、苦しむことになってしまいます。
人は、ネガティブな感情や不幸を感じずに過ごすことは難しいとわかっていても、
これらを感じない/経験しないように一生懸命になってしまうことがあります。
その結果、
-
「ネガティブな感情にならないように○○しない」と行動に制限をかける。
-
「トラブルが起こらないように○○する」と対策を立てたり準備をする。
-
「ネガティブな感情にならない方法を探し続ける」、「自己鍛錬に励む」と自分をレベルアップしようとする。
などの行動をとりやすくなります。
では、これらの行動について説明していきたいと思います。
「ネガティブな感情にならないように○○しない」と行動に制限をかける。
→”今後の人生で2度と笑わない”ことが不可能なのと同じで、不安/怒り/悲しみなどのネガティブな感情を持つことなく過ごすことは無理な話です。
→また、「ネガティブな感情になるのはいけないことだ」と信じ込むと、ほんの少しネガティブな感情を持っただけで落ち込んでしまうことになります。
「トラブルが起こらないように○○する」と対策を立てたり準備をする。
→先ほどの内容と同じように、トラブルを完全に0にしようとすることは不可能に近い話です。
→また、「トラブルを起こさないように」とすることで、些細なできごとに目が行き、自ら落ち込むきっかけを作ってしまうかもしれません。
→結局、トラブルの有無にばかり気を回し、楽しめるはずだった時間がもったいないものになるかもしれません。
「ネガティブな感情にならない方法を探し続ける」、「自己鍛錬に励む」など自分をレベルアップしようとする。
→これらのレベルアップを続けることで、ここまでの2つと同様に避けることのできないできごとに落ち込んだり、うまくいかないことに過度に落ち込むことがあるかもしれません。
→さらに、レベルアップしてやりたいことがなければ、ゴールの見えないマラソンを走り続けるかのようなつらい状況が続くことが考えられます。
”幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない”のタイトルがグサッと刺さりますね。
まとめ&おわりに
いかがだったでしょうか?
私たちは、幸せになろうとしてネガティブな感情や出来事を避けることに
一生懸命になることがあります。
ですが、悲しい気分にならなかったからと言って、楽しいかどうかはわかりませんし、
嫌な人がいなくなったからと言って、楽しく過ごせるかどうかはわかりません。
また、ネガティブな出来事を完全に経験することなく過ごすのが難しいように、
ネガティブな感情になることなく生活を送ることも難しいことです。
それならば、ネガティブな出来事や感情を経験することを受け入れ、
好きなことに取り組んだほうが幸せになれるような気がします。
それって不安を感じながら楽しむってこと?難しくない?
確かに難しいことだと思います。
ですが、できるようになればより楽しい毎日を送ることができるようになるのでお勧めです。
具体的な方法は、今後のブログで紹介していきたいと思いますので、楽しみにしていてくださいね。
一先ず、次回は”ネガティブな感情のコントロールと不幸の悪循環の関係”について書き上げてみたいと思います。
それでは、おーしーまい。
☆注意
書籍や学会などでACTについて勉強していますが、専門家と言えるほどではないため間違いがありましたらご指摘いただけますと幸いです。
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